われわれ食品スーパーマーケットを取り巻く環境は、大きな変化に直面しています。人口の少子高齢化が進み、食糧自給率は低下。長引く経済不況から所得は減少し、お客様のライフスタイルも変化し続けます。また社内業務に目を向けても、ITやブロードバンドなどの技術が進歩することによって、お客様への情報提供のやり方も変るほか、様々な法令改正にも対応することが求められています。このような社会変遷を踏まえ、地域のライフラインとして社会的役割を果たし、豊かで楽しい食生活を継続的に提供するために、次世代の経営者候補が“10年後のスーパーマーケットのあるべき姿”を追求することを目的に本研究会はスタートしました 。
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2012年3月28日(水)大阪リバーサイドホテルにて「シナリオ2020発表セミナー」が開催されました。 |
2011年10月18日・19日に「シナリオ2020~2020年に向けたスーパーマーケット業界の課題と展望~」発表セミナーが開催されました。 |
アンケートの集計が進んでおります。 10年後の2020年をターゲット年として、2010年代にスーパーマーケット(SM)業界が直面する経営環境、競争環境などを予測し、それを踏まえた新たなスーパーマーケット像を展望することを目的としてのアンケート調査でした。調査は、昨年12月2日から始め1月31日まで募集させて頂きました。 結果、スーパーマーケットとして、日本スーパーマーケット協会会員、新日本スーパーマーケット協会会員、オール日本スーパーマーケット協会会員、組合関係の方々89社、日本スーパーマーケット協会賛助会員197社、日本商業学会会員、マスコミ、アナリストの皆さん70名の協力を頂きました。 ひとつの例を報告させて頂きます。2020年の経営環境に関する回答では、下記の結果が出ております。 ここでも高い関心を示しております買物難民につきましては、よくマスコミでも取り上げられるようになって来ております。 第4回のこの研究会でも、これについても活発な意見交換が行われました。 「買物難民(弱者)といっているが、従前に比べ商業施設は充実しているし、コンビニを含む小売店舗数も増えている。実際にはこんな状況は無いはず」という意見がでれば、「小売業サイドからの発想をすればそう思える。しかし、お客さまそのものが年齢を重ねて、行動範囲を狭くせざるを得なくなっている」などと議論が展開しました。 スーパーマーケットは、地域に根差し、地域住民の買物ニーズを支えるべきです。 (大塚 記)
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新しい年、2011年を迎えました。
旧年中のご支援、ご協力に感謝申し上げ、本年も変わらぬご指導をお願いします。
シナリオ2020を策定するにあたり、2011年を考えたいと思います。
2008年のスーパーマーケット業界は、絶好調でした。
しかし、リーマンショックで火の付いた価格競争が各社を襲い、各社とも厳しい状況が続いております。2010年の12月商戦は、11月のトレンドを大きく変えることはありませんでした。
各社の統計結果(3協会の統計発表は1月25日)を待たないと判りませんが、関東の主要な企業の既存店昨対は、食料品で100%位の感覚です。
今年度に入りましても、一度下がった価格への慣れに加え人口減でますますパイは縮小して来ると思われます。コンセプトの確立されないスーパーマーケット退場を余儀なくさせる熾烈な競争環境が続きそうです。そのような中で、規模追求を図り出店攻勢を活発化するリージョナル企業と地域密着を追求するローカルとの戦いの構図は熾烈を極めそうです。
常態化した低価格競争は、体力勝負を余儀なくさせ整理淘汰を進めるのでしょうか。自力の勝負か、連携・買収による規模拡大かの選択肢を突き付けられることになるのかも知れません。オーバーストアのスーパーマーケット業界は、ついに淘汰の時代を迎えるのでしょうか。
売上を創れても、利益をどのように確保するかを考えるとき、さらに強い商品作りや人材教育といった企業力をつけ、店舗力を向上させる戦いが強まりそうです。
主要スーパーマーケット各社が軒並み減益に陥った10年2月期、3月期の決算でしたが、これも荒利を削った安売りによる影響でした。その対策が安く売っても利益が出せる体制の構築で、生産性向上に向けたオペレーション改革や経費の削減が実施されました。
しかし、営業面で真価を発揮した企業には、明確なコンセプトがあります。徹底した低価格でお客さまの支持を集めた企業。個店主義を貫いている企業やお客さまの課題解決を標榜する企業。地価の高い首都圏でも利益が出せる売場生産性、人時生産性を追求している企業などがこれです。
生き残るためには自社の商いのコンセプトを充実させ、進化させることが重要と考えます。
10年後のスーパーマーケットを考えることは、この業界イノベーションを追求することになりそうです。
推敲を重ねてきたアンケートの質問項目が固まり、12月初旬から発送させて頂き、回収作業に入っております。
多くの企業からご返答を頂き始めました。
中には、「10年後のことなど不明である。回答を遠慮したい。」というものもあり、足元の経営環境の厳しさも窺い知ることもできます。
よく、会長の川野が「カット・スロート・コンペティション(喉元を切り裂くような競争)時代がいよいよ本格化してきた」と話しますが、再編・淘汰が加速するのでしょうか。
小売業各社にお願いしたアンケート用紙(PDF)をこのホームページに添付致します。
皆さまも独自に回答してみて下さい。そして、チャンスがありましたら日本スーパーマーケット協会までご送付下さい。ビジョン作成に反映させて頂きます。
なお、エクセルで作成したものをPDF化しておりますので、設問や説明文に意にそぐわない所もございますが、読み替えてご覧下さい。
アンケートの質問項目の決定作業が続いております。11月20日頃までには終了させ、調査依頼を致します。調査対象候補は、総数880社/人程度になると思います。通常会員に加え販売統計で連携させて頂いている、(社)新日本スーパーマーケット協会、オール日本スーパーマーケット協会の各社に協力を頂きたいと考えております。その外に、賛助会員、マスコミ各社、学者、専門家、官庁、民間調査研究機関、コンサルタント等にご協力をお願いする予定です。
<第1部:2020年へのアプローチ> ● 市場の変化 ● 食料などの調達環境の変化 ● 制度の変化 ● 競争環境の変化 ● 情報技術環境の変化 ● フードデザートの社会問題化 <第2部:2020年のSMビジョン> ● 経済環境、市場環境はどのようなことになっているか? ● SM業界の競争構造はどのようなことになっているか? ● 商品の調達はどのようになっているか? ● SM業界の環境(負荷削減)はどこまで進んでいるか? ● SMの店舗はどのようになっているか? ● 商品、売場はどのようになっているか? ● プロモーションはどのようになっているか? ● レジ、チェックアウトはどのようになっているか? ● チェーン・オペレーションはどのような進化をとげているか? ● 情報システムや物流システムはどのような進化を遂げているか? ● 人材の採用、待遇、育成などはどうなっているか? ● 新規事業はどのようになっているか? ● 取引・商慣行の改善はどうなっているか? <第3部:2020年の予測と課題> ● 2020年に自社はどうなっているか? ● 2020年までの重要課題 ● 分析:勝ち残ろうとするSM企業は何をしようとしているか? |
「人口、年齢、雇用、教育、所得など、人口構造にかかわる変化ほど明白なものはない。見誤りようがない。
予測が容易である。リードタイムまで明らかである」
小売業を取り巻く外部環境と解決を図らなくてはならない課題は、大きく4つあります。
一つ目は「高コスト構造への対応」です。
規制の強化や緩和が、新しいコストを生みます。例えば、「まちづくり三法」が見直されて大型ショッピングセンターなどが作れなくなると、ある規模の物件を目指して各社が集中し、コストが吊り上ってしまっています。また、労働基準法の運用強化対応にもコストが必要ですし、環境に関するコストも大きくなってきております。
二つ目は「商品ライフサイクルの短縮化」で、短い期間でどんどん変わっていきますから、在庫管理やロス管理能力の問題にもなってきます。
三つ目が「お客さまの変化」で、これに対応することが一番の課題になります。
ドラッカーが述べていますように、必ず影響を及ぼすものですが、足元の事象ばかり考えてどうしても対策が遅れてしまうものです。特にこれからの10年は、人口・世帯構造の変化だけ捉えても、前半の5年間と後半の5年間でかなり様相が変わります。
前半は、65~74歳の人口が大幅に増加しますが、後半は75歳以上の後期高齢者が総人口比で15.3%(社会保障人口問題研究所)となり、よりディープな高齢化社会になります。
また、モノ不足からモノ余り、そしてモノ離れが進んでくるでしょう。
モノ離れの状況下で、それでも欲しいと思ってもらえるモノや売り場を考える際のポイントは、「お客さまを“存在”ではなく“状態”で見ること」と考えます。個性を表面に出す時代にあっては、自分の気に入ったモノしか買わないといった傾向も多く見られるため、「存在」で見ていると間違いが生じます。人々のこだわりや日々の気分、その場の雰囲気など、お客さま個々の「状態」をとらえたアプローチが必要になってきてもいるのです。
そして、四つ目が「競合の激化」です。
スーパーマーケットの店舗数は、業態別小売業統計によると17,882店舗(平成19年)あります。これにGMS(総合スーパー)の食品売場を加えますと19,465店舗存在することになります。6,500人に1店舗あるというオーバーストア状態なのです。
それぞれの企業が、何を武器に戦うかを真剣に考えて施策を講じ、他店といかに差異化を図り、お客さまに選んでもらえるか。そして販売管理費を下げ、安く売っても利益のでる体質を作る必要が出てきたのです。
講師:拓殖大学 根本 重之 教授 |
1950年代に、欧米流通業を参考にしながら日本の流通革命は起こりました。
セルフサービス・ワンストップショッピング・チェーンオペレーションを核とした革命でした。日本の流通業は、個人商店の集合体を中心として成立して来ましたが、これを契機として、私たち組織小売業を中心とした産業として認知されるまでになってきました。
その後、日々の改良と市場の成熟化が進んだところで新たな革命が起こりました。1980年代に導入されたPOSシステムがそれです。30年目の革新でした。
小売業は、POSシステムからの情報力を武器にし、一括仕入れ能力を背景にパワーを持ち始めたのです。
ここでは、成功のモデルがありました。
店舗オペレーションの生産性向上のための施策を検討し、欧米の先進事例を学びながら新たな店舗業態を開発することを一生懸命に行えば良かったのです。
それから30年。
人口増加が期待できず、店舗も飽和状態を迎える時代になりました。ベンチマークし、やるべきことをやっていれば誰しもが一定の収益をあげることができる時代から、モデル無き時代に突入すると考えられます。過去の延長線上に未来は無い時代になりました。
私たちは、次世代の流通業を取り巻く環境を予想し、その環境下で勝ち抜くためには企業が何を行うべきかを考えて行きたいと思います。
明日の変化を予測することが難しい時代です。10年先の業界動向を正しく予測することは非常に難しい作業になるでしょうが、スーパーマーケット各社が、自社の革命の狼煙をあげ、自社のドメインを明確にし、それを追求することが最も大事な時だと考えます。
この「シナリオ2020」10年後のスーパーマーケットのあり方研究会が、流通業に携わる方々にとって、今後の経営の舵取りになれるように研究を重ねてまいりたいと思います。